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Mark Sawalha claims to have found a pyramid on the moon.

SF「グランティスの遺産(上)」


 2018年6月26日、SF小説「4D4 グランティスの遺産(上)」の執筆が完了した。400字詰原稿用紙換算で435枚の長編である。
 このSFは紀元前1万年前に滅亡した先人類が南アルプス塩見岳山中に残した技術遺産を主人公の東飛鳥(あずまあすか)が相続することから展開される。上編は地球規模の人類存続がメインテーマとなっている。執筆を開始した下編(中編になる可能性もあるが)は地球を基軸にした宇宙規模の人類存続がメインテーマになる予定である。

 このSFは2017年9月29日から書き始めたので完成まで約8か月かかったが、実は執筆開始前に3年半以上かけてSFの基礎構造をデザインするために時間を費やしてきた。SFは何らかの先進的な科学技術を取り込むことが必須条件となっており、最低限、読者が理屈で納得できる科学技術的背景を説明できなければ、それはSF小説ではなくファンタジー小説となってしまう。空想小説でも魔法とか超能力とかが、その根拠に理解を得ることなく安易に結果だけが登場すればSFのジャンルに仲間入りはできない。

 本SFには様々な未来技術(先人類が残した技術であるため実際には過去技術と言った方が正直であるが)が登場する。Dシールド、Dフロート、Dジャンプ、Dパワー、等々であるが、これらの技術は4次元振動という物理現象を応用して開発された技術となっている。
 この4次元振動 (Four Dimensional Space Ocsillation) については作品中で述べられるのでここでは省略するが、私は「将来」必ず発見される物理現象であると信じている。

 さて、このSFは「KOzのエッセイ」の執筆活動なくしては存在しえなかった。
 本作品の基本構想だけではなく諸処のプロットにもKOzのエッセイを書くにあたって調べたり思索した結果が反映されている。ちなみに「4D4 グランティスの遺産(上)」執筆に取り入れられた「KOzのエッセイ」を参考までに下記示しておく。

  #008 提言「日本の国家戦略」
  #010 BEE(飛翔昆虫型ロボット」
  #013 英知の発露
  #016 イエス「真伝」
  #018 鎌倉時代のUFO
  #021 ロボット三原則について
  #022 ペルーの地上図形
  #023 16世紀、日本はなぜ植民地にならなかったのか?
  #024 業(ごう)とは
  #026 世界最長小説
  #029 防災地下ユニット住宅
  #030 ヒトの定義
  #031 日本列島の形成
  #035 マグネシウム革命
  #036 日本人の源流
  #038 人間力
  #040 憲法解釈の限度
  #041 仏法とは
  #043~047 心の実相((1)十界~(5)一念三千
  #048 日本語の源流
  #049 ロシアと北方四島
  #050 銅鐸の謎を解明する
  #051 「代表的日本人」
  #052 クリスマス?
  #053 インド仏教の興亡
  #054 西洋哲学の変遷と限界
  #055 十五夜は満月?
  #057 「サイエンス」の効能
  #060 中南米の古代技術の謎
  #061 UFOは存在するのか?
  #064 東日本大震災と日本人の精神土壌
  #065 宗教と哲学の区分
  #066 縄文の謎(1)土偶
  #068 SF評論
  #072 カッパ伝説
  #075 人生!その微妙な事差の連続
  #077 国の境涯
  #079 心とは
  #080 日本仏教史における法華経
  #081 (仮説)暗黒物質とは?
  #083 新日本古代史
  #086 内外相対の時代
  #087 先人類の遺産
  #088 拒否権

 最後に「4D4 グランティスの遺産(上)」の梗概(あらすじ)を書いておきたい。

(梗概)
 2024年8月、東飛鳥は大学時代の登山部の後輩の須藤正と南アルプルの塩見岳に登っていた。頂上手前の天狗岩で一休みしているとき登山道の崖下から不思議な物体が空中に飛び出してくるのを目撃した。これが全ての始まりであった。
 塩見岳の山中地中深くには、1万2千年前に滅亡した先人類が現人類のために構築した遺産シェルター・エルカが、千人のアムウィに守られ活動を続けていた。
 エルカの相続者に選ばれた東は、先人類のグランティスのアム・オム・グラン博士の遺言に基づき、高度な知識と技術遺産を使って人類存続のための活動を開始した。
 最初にこの秘密の一部を日本国内閣総理大臣の林一郎に明らかにし、日本が産業、経済、外交、軍事面で世界の最先端の力を持つためにDフォースとして最大限の協力と援助を提供することを約束した。
 エルカに保存されていたグランティスの遺産の中核ともいうべき人工生命体・アムウィの全面的な協力のもと、東はまず日本政府に対して未来技術ともいうべきDフロートとDシールドの技術供与を開始した。この技術により自衛隊の保有装備は世界最先端かつ最強のものに変貌した。続いて日本の民間企業へのDフロートの提供が開始され日本は世界最強の科学力と経済力を得ることになった。
 一方、Dフォースは、グラン博士の遺言にもとづき、地球人類存続のための活動を活発化させていた。まず、東シナ海に臨む尖閣諸島のDシールドによる封鎖により、中国軍に対し圧倒的な力を見せつけることになった。また、Dカーを使った原子力潜水艦の捕獲は全世界を驚かした3日間で全てDフォースに捕獲され西サハラ砂漠に設定した保管域に強制収納されてしまった。
 2028年1月、北朝鮮は突如19発の核弾頭ミサイルを米国主要都市と日本に向けて発射した。これらのミサイルは発射後短時間でエルカからDジャンプしたDカーによって捕捉された。Dフォースは米国と日本に対して北朝鮮への報復を制止し、Dフォース自らが制裁のため43台のDカーを北朝鮮に派遣し、反人類的暴挙の責任者である金世温主席の捕獲と北朝鮮の全ての核施設・軍事施設の破壊を実施した。
 米・露・中などの核大国がその強大な核軍事力を背景に主導権を握ってきた国連においてもDフォースをバックにした日本が指導力を発揮し始めていた。
 2028年9月に開催された国連総会で特別講演に立った林首相は、常任理事国5か国が持つ特権である、安全保障理事会における「拒否権」の廃止を提案した。林の講演の最後にDフォースのコミットメントが伝えられた。拒否権廃止の提案は直ちに総会の議案として決議にかけられた。180か国を超える賛成により可決され、続いて最終決定権を持つ安保理事会に場所を移された。反対した場合にDフォースが座視しない、とのコミットメントは拒否権を使って国連を支配していた常任理事国5か国もさすがに拒否権を行使することができず、議案は可決された。国連改革が始めて実現した。
 Dフォースに託されたグラン博士の遺言の内、現人類への技術遺産相続と並んで重要であったのが、その技術を戦争の具としないための人間の心と境界に関する課題であった。「エルカの宗教選別基準」とよばれる先人類の凝縮した英知にもとづき、この第五基準を超える宗教が人類に広く普及していることが、先人類の残した先進技術を現人類に全面的に相続させる条件となっていた。全ての技術は使う人間の心と境界によっては平和技術がたちまち人類を滅ぼす大量破壊兵器に変わってしまうことを、先人類が自らの滅亡への道程を歩んで熟知していた。
 2029年2月、国連安全保障理事会では、日本から提出された「人類存続のための地球統合政府設立案」が重要議題として協議されていた。12項目からなるこの設立案は、国連を発展的に解消して地球政府に昇華するための条件であった。 この地球政府案は安保理事会で二か月、国連総会で一か月に及ぶ激しい論争の結果可決された。この決議は、6か月以内に主要国の過半数が批准を終えることによって発効されることになった。さまざまな混乱とできごとがあったが、2032年1月1日が地球統合政府の創始日として確定した。
 地球政府の発足を一週間後に控えた2031年12月24日、多摩中央市にあるDフォースの対外活動の拠点であるハルナ合同本社ビル10階の会議場には、全世界から報道関係者など千名が集まり、Dフォースとして初めての公開記者会見が開かれていた。1年2か月後と判明した直径450キロメートルの天体の地球衝突に関しての人類存続の選択についてであった。