062_太陽を横切るISS
UFOは存在するのか?


 非常に奇妙なことが続いている。
 UFOがこの地球に存在するのかどうか、について永い間極めて多くの人々が口角泡を飛ばす論争をしてきている。これほど思い込みが間違っていることに気が付かないままに、何を論争しているのかを無視していることも珍しい。
 UFOが存在する事は誰でも認めているはずなのに、UFOが存在するかどうかについて必死で「YES or NO」と真っ向から対立する主張している。

 UFOとは何なのか?
 UFO(ユーフォもしくはユーエフオー)とは英語では、”Unidentified Flying Object”、日本語に訳すと「未確認飛行物体」であり、正体不明の飛行物体を指す。
 従って、何らかの飛行物体が観測されると、それはUFOの「可能性がある」対象となる。この飛行物体が、自然現象なのか、それとも何らかの人工的な物理現象が飛行物体と誤認されたのか、または最新軍事兵器なのか、それともだれか個人か団体が製作した人工物なのか、更には悪質なトリックやCG映像なのか、等々の確認がなされる。多くの人がさまざまな情報やデータを分析してその結果、このUFOの実態が明らかにされる。それでも正体が解明されずに正体不明として残る事もある。
 また、UFOは本来軍事用語として使われてきた経緯があり、当局が確認できていない飛行物を未確認飛行物体(UFO)と呼んで、これが航空機なのか敵国のミサイルなのかレーダーの故障なのか、対象物の特定作業を進める際の初期段階の呼称となっている。
 すなわち、最初に観測された正体不明の飛行物体もUFOであり、その実態解明を進めても依然正体が不明なままになった場合もUFOとなる。

 そうであるならば、UFOは存在しているのは明らかであり、この本来の意味でのUFOを否定する人は地球上に誰もいないであろう。
 文頭に提示した奇妙なこととは、本来の意味でのUFOについては、存在するかしないかを議論することは無意味であるにもかかわらず、UFOが存在するかどうかを論争していることを述べた。
 「UFOは存在する!」、これは論争のテーマとはなりえない事実である。

 そうであるにもかかわらず、UFOが存在するかしないか、の論争が激しいのは、UFO(未確認飛行物体)を「地球外文明の宇宙人が操縦する宇宙船」と定義を極端に狭めて決めつけていることに起因している。
 わかりやすく言えば、「UFO=空飛ぶ円盤」と思い込んで、または、決めつけている。
 地球に地球外文明の宇宙人が操縦する宇宙船が存在するかどうか、というテーマになった途端に、存在する、存在しない、という両極端の主張が激しさを増すことになる。

 私は、地球外文明の宇宙人が操縦する宇宙船を、”Alien’s Flying Vehicle”(AFV)と名付けて、UFOとは別の呼び名にすることを提案したい。
 UFO(未確認飛行物体)は存在する、しかし、AFV(エイリアン飛行体)が存在するかしないかについては意見が分かれる、という言葉の整理が無用な混乱を収めることになると思う次第。

 新たにAFVを定義して言葉とテーマの混乱を除いた後、その上でやはりAFVが存在するのかしないのかに関しては非常に興味があるところとなる。

 特に人類の著しい科学技術の発達がなされた20世紀以降、UFOに関する無数の観測と報告がなされている。この中で、人類の現存科学技術では説明ができないUFOも数多く含まれていると思われ、これがAFVの存在を主張するグループにとってはAFVの存在を説明する証拠であるとの主張となり、AFVの存在を否定するグループにとっては対象となる物体・現象が情報が不足しているために特定できないだけでありあくまでUFOはUFOであり直ちにAFVであると断定することは非科学的であるという主張にいき着く。

 私はUFO/AFVの観測を日本政府の活動として実施することを提案したい。
 民間団体が行なうことを否定するわけではないが、UFOであるかどうか、またそれがAFVの可能性があるかないか、を判断する最終段階で場合によっては国家機密に触れる可能性もあり、民間団体の観測ではそれを乗り越えることができないという過去の実例が米国その他ではあったことを踏まえ、日本政府の機能としてのUFO観測組織が有効であろうと考えている。
 また、UFOがレーダーに対してステルス性を持っている可能性もあり、最新の科学技術を総動員しないとUFOの解明が難しいと予想されることも、国家組織が必要とされる理由でもある。
 日本で敢えてUFOの観測をする必要性については、日本の情報公開の環境が整えられていることもあり、日本政府の機関に対する信頼度が重要との判断に基づいている。

 もし、日本で政府の特別組織を設置して税金を使ってまでUFOの観測をする意義が国民に認められるのであれば、UFOの観測方法についてひとつ提案をしたい。
 UFO観測機関が文部科学省と防衛省のどちらの下部機関とするかによって観測目的と対象範囲、更には観測方法についても多少異なってくるかとも思うが、いずれの場合でも、太陽を背景とした直視観測も組み込んではどうかと考えている。

 太陽は最も明るい天体であり、太陽の見かけの明るさは満月の約43万倍である。
 この太陽を背景にして減光フィルターを使用した望遠カメラを使うと、その前を横切る物体の形を極めて明瞭に見ることができる。例えば、地上約400kmの上空を秒速約7.7kmの高速で移動している国際宇宙ステーション(ISS)であっても、この方法で見ると形状を鮮明にとらえることができる。(添付の写真参照)

 太陽の角直径(視角度)は30秒(1/2度)であり、太陽の天空に占める面積は 0.003%に過ぎず、また昼間しか見えず、雨天曇天でも見えず、非常に効率の悪い観測背景とも思えるが、一度これを背景に観測が成功した場合には、極めて有効な情報が得られるという魅力がある。
 また、もしひとつの観測地点から太陽を横切る飛行物体が観測できたとすると、その飛行物体の高度(地上高)の約10分の1の距離だけ離れた地点からも同時に太陽を背景にその飛行物体を観察することができる。もし2カ所から同時に観測できれば、飛行物体の形状だけではなく、物体のサイズ、飛行高度と水平移動速度が計算できる。もし3カ所から同時に観測できれば3次元空間の移動航路が特定でき、実速度と実加速度まで特定できることになる。
 UFOが太陽面を横切る確率は低いとしても、もし横切った場合の観測データは過去のUFOの観測データを遥かに上回る上質のデータを得ることができよう。
 太陽背景の直視観測と並行して、他の計測装置の観測データを統合すれば、観測網に引っかかったUFOを特定し、場合によってはAFVの可能性があるかないかをも高い確度で判定できるのではないかと期待したい。

 私は本抄で、UFOとAFVを区別した議論、日本政府のUFO観測組織、そして太陽を背景にした観測方法、を提案したが、最後に一点だけ述べておきたい。

 もし現在の人類の科学技術水準ではなし得ないと思われるUFOの性能が確認できたとしても、それが直ちにAFVであると即断はできないと思う。
 なぜなら、現人類(ホモ・サピエンス)以外の地球由来の人類(ヒト族)(これはエイリアンではない)が製造した飛行体である可能性も残っており、AFV主張者はなぜHFV(Homo’s Flying Vehicle ヒト族製飛行体)ではないのかを科学的に証明する必要があると言っておきたい。

[参照文献など]
http://ja.wikipedia.org/wiki/未確認飛行物体
朝日新聞DIGITAL http://www.asahi.com/articles/photo/AS20140513003564.html
 (太陽を横切ったISSの撮影 2014年5月13日)