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ツツジとサツキの違いは?


 今から300年程前、江戸時代元禄年間に、江戸の伊藤伊兵衛という植木職人が「錦繍枕(きんしゅうまくら)」というツツジ・サツキの図入解説書を著した。その書の中で、ツツジ175品種、サツキ161品種が紹介されている。これがツツジとサツキを区分して解説した現存する最古の書物と言われている。
 ツツジとサツキを同じ書物で図説したこと自体が、当時からもツツジ(漢字では躑躅と書く)とサツキ(同じく皐月)は区別するのが難儀であったことを物語っているようにも思える。また、日本人は伝統的に植木や園芸に対する思い入れが深いことによるものと思うが、この当時にも既にツツジもサツキも数百種類にもおよぶ品種が作られていたことになる。

 植物学上から言えば、サツキはツツジの仲間であり、ツツジもサツキも共に、ツツジ科 ー ツツジ属 ー ツツジ亜族に属し、ツツジ属全体をツツジとよんでいる。
 ツツジ属(Rhododendron)はカエデ属と分布域が似ており、主に北半球に広く分布し、南半球ではニューギニアやオーストラリアに至る。ヒマラヤ周辺には非常に多くの種が分布している。

 日本で一般にツツジとかサツキとか言う場合は、同じツツジ属のシャクナゲやアザレア(西洋ツツジ全般の別名)などと区別して使っており、これは学術的な言い方というよりは園芸や伝統的な植木・庭木の好事家の世界でのよび名であり、植物学的な分類とは異なっている。
 ここでは一般的な区分としてのツツジとサツキについて、まずどのように見分ければよいのかを補足すると、その違いと特徴について大雑把な言い方が許されるのであれば、大方の人々は次のように区別しているようだ。

 ツツジ:
 *開花時期が4月すぎ頃の春
 *落葉樹
 *花が終わると新芽が出る
 *枝先に複数の花をつける
 *大木になるものもあり、枝振りが直立性
 *葉は比較的柔らかめ

 サツキ:
 *開花時期がツツジより一ヶ月程遅い6月頃の初夏
 *常緑樹で、新葉が出てから開花
 *枝先にたいてい一輪の花
 *枝振りが横開性
 *ひとつの枝に異なる色の花がつくものが多々ある
 *葉は比較的小振りで光沢があり硬め、葉の緑色はやや濃い
 *盆栽に供されるのはほとんどがサツキ

 これらの個々の特徴も全て例外があり絶対的な判断基準とはならないが、普段目にする範囲であればこれでツツジとサツキの区別ができるのではないかと思われる。
 いずれにせよツツジもサツキもさまざまに交配を続けながら次々に新種が作られているのが実情であり、ツツジとサツキの区別自体が意味をなさない場合も多いのではなかろうか。専門家でも誤認することがあるようにも見受けられる。

 要は、それぞれの特徴が強く出ている品種に限って、「ツツジ」と「サツキ」を区別してよぶというのが無難なところではないか、と思う次第。
 区別できなければ、「ツツジ」と言っても一向に構わないと思う。なぜなら、サツキも元々、皐月(さつき/旧暦の5月)に咲くツツジということで、皐月ツツジと言っていたのであるから。
 蛇足ながら、盆栽展では「見事なサツキの盆栽」と表現するのが出品者に気まずい思いをさせないマナーであろうか。

[参照文献など]
国立国会図書館デジタルコレクション http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2605819
渋谷園芸 http://www.shibuya-engei.co.jp/topic_plant_17.html
十一造園研究会 http://t-sakachan.net/toichizoken/2008/05/post-6.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/ツツジ
http://ja.wikipedia.org/wiki/サツキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/シャクナゲ
http://ja.wikipedia.org/wiki/アザレア
http://ja.wikipedia.org/wiki/盆栽

他。