052_SOLIINVICTO
クリスマス?


 キリスト教徒の多くは(元来、ユリウス暦の)12月25日をクリスマスとしてイエス・キリストの誕生を祝っている。日本では降誕祭とか聖誕祭などとも訳されている。

 しかしながらキリスト教においてもイエス・キリストがいつ誕生したのかについては確定できる文献はなく、古代から諸説があり定まっていない。
 誕生日が不明というだけではなく、生まれた年についても紀元前7年から西暦4年までの間で種々説が分かれている。  
 従って現在広く使われている西暦もキリストの誕生を基に紀元としている、というのも正しくはない。西暦6世紀になってこの西暦(キリスト歴)が考案されたが、キリスト誕生の翌年を紀元元年とする西暦算定に計算間違いがあったと言われている。結果として、この西暦を決めた時に西暦が決まった、ということであり、その西暦に普遍性があるとする「キリスト誕生を紀元とする」という主張とそれなりの計算根拠が一応あった、ということにすぎない。
 また、ベツレヘムで誕生した(新約マタイ伝)としているのも後世になって決めたことであって確実な史実とは言えない。

 要は、生まれた時も生まれた場所も不確かであるが、現在では、2013年12月25日を2013回目のキリストの誕生日として「決めたこと」として祝っている、ということであろう。

 12月25日がイエス・キリストの誕生日であるかどうかは大いなる疑問ではあるが、なぜ12月25日を祝っているか、についてはかなり確度の高い歴史的な背景があるといわれる。
 
 ミトラス教(Mithraism、もしくはミトラ教)は紀元2世紀頃をピークとして古代ローマ帝国(西ローマ帝国:27BC~476AD)で広く勢力を伸ばしていた太陽神ミトラスを主神とする密教的宗教であるが、4世紀末にキリスト教がローマ帝国の国教となり弾圧が始まるまで、帝国内で最大の宗教として普及していた。
 このミトラス教は、毎年12月25日にソル・インウィクトゥス・ミトラス(Sol invictus Mithras、不敗の太陽神ミトラス)の誕生を祝うナタリス・インウィクトゥスと呼ぶ祭りを行っていた。この祭りは冬至を大々的に祝う習慣と重なりあってローマ帝国時代を通じて広く行われていた。
 ミトラス教が衰退し、キリスト教が国教として勢力を拡大した後も、この12月25日のミトラス誕生の祭りがキリストの誕生祭として姿を変えて残り、現在に至っていると言われる。これがクリスマスが12月25日に行われることになった系図である。

 「歴史は後から作られる」とは至言であるが、クリスマスも後から作られ意義付けされた歴史の断片となっている。

[参照文献など]
 KOzのエッセイ#016「イエス『真伝』」
「ミトラ教」http://ja.wikipedia.org/wiki/ミトラ教
「Roman Empire」http://en.wikipedia.org/Roman_Empire
「キリスト教の歴史」http://ja.wikipedia.org/wiki/キリスト教の歴史