026_PerryRhodan
世界最長小説


 世界で長編小説としては「千夜一夜物語」(通称、アラビアン・ナイト)が著明であるが、これは書名のごとく全部で1001話が収録されている。元々の原話が全て現存していないため、後世に創作された説話も挿入され、また多数の編集版があり、同時に多くの偽写本も制作されてきた経緯がある。そのため多数の作者が関与し、歴史にもまれながらも、結果として1001話の内容を含む長編小説として成立している。

 歴史的には「千夜一夜物語」が最長編小説であることはほぼまちがいないことと思われるが、近年ではそれをはるかにしのぐ最長長編小説である「宇宙英雄ローダン・シリーズ」(Perry Rhodan Serie)が登場している。
 ローダン・シリーズはドイツ(当時は西ドイツ)で1961年9月に初巻が刊行され、以後K.H.シェールなど複数の著明なSF作家がリレー式で著作を続けており、ドイツでは毎巻が週刊で出版されている。ドイツでは、2013年3月15日に第2691巻が出版されている。
 日本ではドイツの原本発刊に10年遅れて早川書房から1971年7月に第1巻が翻訳発刊された。ドイツの2巻分を1冊として出版され、当初は翻訳者が松谷健二ひとりであったため、3ヶ月か4ヶ月に1冊の割での出版が続けれていたが、最近では複数の翻訳者が翻訳を行っており出版のペースも月2冊(ドイツの4巻分)となっている。2013年3月15日現在で第444巻(ドイツの888巻分)が出版されている。
 
 ローダン・シリーズは世界最長小説であり、今なおその記録を塗り替えているウルトラ小説であるが、特筆すべきはその内容であろう。
 現存するSFのテーマやモチーフが全てと言ってよい程、このローダン・シリーズの中で登場しており、まさにSF大百科小説といってよいレベルに達している。
 また、新科学技術による地球の統一を最初の舞台設定にしており、殺人やセックス描写を極力さけるなど人類の英知とモラルを重視した精神面でのレベル維持、更にゲルマン的とも言える科学技術力を基盤にした力の戦略、など宇宙規模の文明史を模索していると言えよう。

 私は日本語版のローダン・シリーズを第1巻から最新刊までの全ての本を専用の本棚に並べて保管しているが、今の翻訳のペースが続く限り今後一生かけてもシリーズが読み終えることが無いという絶望感と、一生読むシリーズがあるという満足感と、常に両極端の縁に立たされている。
 いずれにしても、世界最長小説というものはこういうものなのであろう。