008_日本の領海EEZ

提言「日本の国家戦略」

 今後20~40年間の中長期国家戦略として、次の基幹政策を提案したい。

 日本が準超大国として、政治及び経済・科学技術・工業及び農漁業生産・外交及び軍事において、米国・中国・ロシア・EC等の潜在的超大国からの攻撃と圧力を防衛できる自立能力を有し、国民が平和と福祉を享受できる国家建設を目指す。
 
(1) 資源戦略:
 世界第7位の排他的経済水域(EEZ)を有する日本は海洋資源を総合的に利用できる立場にある。総合的海洋資源とは、直接エネルギーの利用(海上風力・海流・潮汐・温度差などを利用した発電)、海水の淡水化及び海水成分の抽出(塩だけではなく貴金属・レアアース・ウラン等の原子力原料など)、海底鉱物資源の採掘(石油・天然ガス・メタンハイドレート・レアメタル・レアアース・マグネシム等の多利用資源など)、栽培漁業(水産物の養殖と保護)、観光資源開発、洋上・海中・海底の人口施設建設、など膨大な資源をいう。
 これらの海洋資源の開発には多方面の総合技術開発が必要でありそのための資金も巨額なものとなり、また資源開発そのものにも膨大な資金が必要となる。従って、民間の活力を支援すると同時に国家事業として大規模な先行投資を行うことが必要である。
 また、事業が実現してくるとその経済的リターンも巨大なものとなってくるため、税収に次ぐ国家収入となってくる。

(2) 労働人口戦略:
 日本の人口はピークを迎え減少が始まっている。特に国の生産基盤を支える若年層の減少が激しく、年と共に労働力の減少となって国力維持が難しくなってくる。
 海外からの移民で労働力の不足を補うことも必要であろうが、抜本的には人間型知的ロボット(HR : ヒューマンロボット)の国家プロジェクトとしての開発と増産が必要と考える。社会のほとんど全ての労働現場で人間でいえば数年程度の実務経験を有するレベルの能力を持ったHRを社会に投入していく。
 この開発についても国家認定のJIS規格を制定し民間の開発能力を最大限に活用するとともに、国家機関としての例えばNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)を模範にしたロボット開発機関を設立して民間をリードし支援していくことが有効であろう。
 HRの労働に対しては新たにロボット税を設定し国家収入を増やすこととしたい。
 目標としては暫定的に、日本人の人口に対してHRも同数の1:1とすれば、国民の拘束労働時間を現在の数分の一程度にすることができて収入も増やすことができるであろう。

(3) 国土戦略:
 日本の国土は人口に比して十分に広いとは言えず、更に大部分が山地であり平地当りの人口密度は世界的に見ても日本は非常に高くなっている。
 上記戦略(1)/(2)もこの改善に貢献するが、超高層ビルの戦略的建設が最も効率的な対応となる。
 超高層ビルとは標準的なサイズを、例えば東西200m角(200m x 200m)に地下100mで地上高さ800mの全160階程度の職住総合多目的複合ビル(MPB)を想定している。このビルには平均200m2の住宅が1万戸入り、学校などの公共施設や機関が入り、大規模商業施設や中小店舗、企業の事務所、公園、スポーツ・アミューズメント施設などが入る。更に地下には鉄道、地下鉄、道路、動く歩道など他の超高層ビルなどとつながる交通機関のステーションとパーキング、また電力、ガス、水道、下水などのインフラ諸設備が置かれる。夜間想定人口が3万人~4万人、昼間人口5万人~6万人となり、ビルがひとつの市の規模となる。
 このようなMPBを例えば東西1キロメートルの間隔をおいて建てるとMPBの間にあった住宅やさまざまな中小ビルを全部空っぽにすることができる。この跡地をどのように利用するかは地域によって多様であろうが、工業用地や産業施設用地を拡大したとしても現在の数十倍の空き地が誕生する。利用できる平地が数十倍に増えることになる。
 新たに誕生した平地を公共の森林公園やゴルフ場にすることもあろうが、できる限り農業用地として活用していくのが望ましい。農業生産規模を拡大し効率化を図ると共に生産コストを下げ生産量を増やしていくことができるのではないか。
 山間地にも都会地と同様にMPBを建設できるところもあるはずで、地下の高速道路と高速鉄道で他のMPBと連結することにより日本全国に分散したMPBネットワークが構築できる。災害にも極めて強固な対策となっていくであろう。

(4) 防衛戦略:
 日本単独の専守防衛システムの開発と構築が必要と思われる。
 軍事力を急拡大している中国だけではなく、日本はロシアと米国を含め3つの超大国(潜在超大国)の間で常にパワーバランスの渦中にある。
 日本が世界的な軍事力を有する超大国を目指すことは現実的ではないが、準超大国として超大国からの侵略や攻撃または深刻な圧力に耐えうる能力を確保することが目標となる。
 現在は、日米安全保障条約が超大国に成長しつつ有る中国からの攻撃に対抗する有力な方法となっているが、米国の国力もいつまでも現状を維持できる保証もなく、また米国が将来防衛線を中部太平洋に後退させても超大国中国とのバランスを保つという選択をする可能性もあり得る。この場合、日米安保は米国から破棄されることになる。
 従って日本が独立を維持するためには超大国に対しても外交・軍事防衛力(及び抑止力)を単独で保持することが目標となる。この場合重要なのは専守防衛を明記した憲法制定であろう。
 特に、「戦略的フロンティア」を1980年代に国家基本戦略として制定し国力(軍事力)の拡大が国境線を拡大するという野獣的な規範を持つ中国に対しては、領土侵略があった場合に一定期間日本単独で中国に対抗防衛できる総合軍事能力を保持することが重要となる。
 核攻撃能力を保有するかどうかは厳しい判断が求められるが、イギリス並みの報復能力としてのICBM搭載潜水艦を数隻保有することはあるかもしれない。
 何れにしても当面は、日米安保に支えられた防衛抑止力を基盤として、必要な防衛力の確保が重要となる。
 付則すれば、真っ先に侵略の対象となる沖縄県が防衛力を否定する動きしかできないのは歴史の後遺症としてあきらめるしか無いのであろうか。

(5) 経済戦略:
 上記した戦略(1)~(4)は全て日本の経済活性化に貢献する。ただし(4)については再生産に直接結びつかない経済活動であり、軍事技術の民間への還元と民間技術の吸収を政策として実施していくことが経済面での相乗効果をもたらすことになろう。
 ここでは通貨管理面についてだけ述べるが、管理能力の高い通貨であるユーロと円のリンク制を検討すべきかと思う。かならずしも日本がECに加盟することを意味しているのではなく、通貨に限定してユーロとのリンクは可能なはずであり、円とユーロの共存と安定に資する可能性が高い。
 歳入の半分を既存の税収以外の国家事業収入と新税(ロボット税)で確保する。
 最後に、日本と同規模の島国であり北半球と南半球とで対極的に位置しており経済構造が補完的な形となっているニュージーランドとの戦略的提携を進めたい。世界第4位のEEZ保有国であるニュージーランドと同6位の日本が組めば、米国を抜いて世界第1位のEEZとなり海洋開発の経済効果が倍増する。