007_神代文字B
表音文字と表意文字


 文字には音のみを表記する表音文字と文字そのものに意味がある表意文字がある。

 日本語は、ひらかな、カタカナが表音文字で、漢字が表意文字であり、表音文字と表意文字の両方が混在して使っている珍しい言語となっている。

 アルファベットは表音文字であり、これを組み合わせて意味のある単語を形成する。ヨーロッパや世界中で多くつかわれているのは、この表音文字である。
 漢字の本場である中国では表意文字が使われているが、アルファベットを中国語訳する際には仮名が無いために近い発音の漢字を当てて使っている。中国語のあいまい母音「e」は日本語の「え」の発音とは全く異なり、また「え」音に近い音の漢字が無いために英語のアルファベットを漢字に当てて覚える場合、例えば英語の「F」「M」「N」など「発音記号"e"」「日本語"え"」で始まるアルファベットの発音を「アイフ」「アイム」「アイヌ」に近い音で覚えてしまう弊害も生ずる。
 無論、仮名と英語のアルファベットの音とは完全に一致しないので、仮名で英語の発音を正確に表記はできないわけであるが、例えば、McDonald'sを「マクドナルド」と訳すかわりに発音に従順に「マクダーナルス」と表記すればかなり発音記号で表記した場合に近づく。少なくとも中国語で「
麦当 [màidāngláo」と漢字を表音文字化して当て字として使っていることを見ると、日本語の仮名がいかに有用かがわかる。日本語から漢字も仮名も無くならずにいるのもうなずける。
 朝鮮半島ではかつて日本と同じように漢字(表意文字)とハングル(表音文字)が交ざった表記をしていたが、国策で漢字が事実上使用禁止となっており現在はハングルのみの国語となっている。韓国の首都ソウルは最早漢字では表記できず、若い世代では自分の名前も漢字で書けなくなってきている。日本語と同様、音(ハングル)は同じでも漢字に直すと全く意味の異なる言葉も多い。表意文字(漢字)の便利さを放棄した代償を払っている様にも思える。
 古代の小アジア(現在のトルコ)で使用されていたルウィ語は表意文字と表音文字(音節文字)を使って書かれていた。現在のトルコ語が日本語の文法に近いことを考え合わせると興味深い。
 中国のチベット東部や雲南省北部に住む少数民族のナシ族が使っている*トンパ文字は象形文字であり、独自の表意文字だけを使っている珍しいケースである。
(*ナシ族で一般に使われているのではなくトンパと呼ばれる司祭によってのみ受け継がれている文字)

 一部の例外はあるが、現在、世界中で表音・表意文字を使っているのは日本語だけと言って良く、他の世界では全て表音文字か表意文字のどちらかのみを使っていると言える。

 ところで、数字はどちらの文字であろうか。「2」は音を表すのではなく「ふたつ」「1の倍」という意味を表しているのであるから表意文字であろう。

 
と言うことは、世界中どこでも、数字は必ず使っているわけであるから、表音文字と表意文字の両方を使っている、ということになるるのではないか。どちらが多く使われるかという程度の差はあるが。日本語はその程度が極端に高い、ということだが。