#004 時間の逆行について

004_ろうそくyy
時間の逆行について


 時間は逆向きに現在から過去に向かって戻れるのか。

 例えば、ロウソクのロウが溶けた状態を考えると、時間が逆行できるのであれば、溶けた液体のロウが元の溶ける前の個体のロウの状態にまで一瞬のすき間も無く戻れる事を意味している。
 これが可能となるためには個体から液体に変わりそれが流れる状態の一瞬一瞬のロウの情報を完全に次の一瞬に伝えていなければならない。この事は、現在の一瞬に過去の全ての状態の情報を内包していなければならないことを意味する。
 たとえ限られた過去にまでにしか戻れないと仮定しても、その情報はとてつもなく膨大なものであろうし、現在の状態の中にそれを全て閉じこめておけるとは思えない。
 一瞬の状態の情報とは、状態を連続して逆行できるようにするためには、ロウそのものの全ての構成素粒子の状態に関する情報のみならず、外界の直接・間接・遠間接の相互情報も必要となる。紙が空中を舞い落ちる時、紙そのものの情報だけではなく、大きく言えば地球の気象状況も、月の引力も関係しているのは程度だけの問題である事実であろう。
 たとえこれらの情報が全て整っていたとしてもカオス的な情報もなければ元の状態には決して戻れない。
 人間が認識できる全宇宙の情報量は計算すら難しい程のものであるが、その宇宙の中に含まれるブラックホール一つだけの情報量(状態数)でも、およそ『10の「10の78乗」乗』と計算されている。このような想像を絶する超数は仏法用語(法華経如来寿量品)にある*那由他(なゆた)・阿僧祇(あそぎ)というような単位を使わなければ説明できないような規模であり、ロウソクの一瞬の状態にこのような膨大な情報が関与していることを認識することが重要である。
(*一説[算学啓蒙]によると、那由他=10の112乗、阿僧祇=10の104乗であり、寿量品には「5x100x1000x10000x100000x 那由他x阿僧祇の数の銀河宇宙の微塵の数」という表現が用いられている)

 以上のことから考えるに時間の逆行は極めて困難(不可能)なことと言えよう。
 時間=情報であり、その情報の規模が決して限定された範囲のものではない膨大なものであるというのがその根拠となる。